悪魔とダニエル・ジョンストン

fig2006-11-12

相変わらずのメモ書き


厳格なキリスト教徒の両親。老いた現在の3人の姿はあまりにも痛々しい。
振り返って語りつつ、突然押さえきれず涙を流す父親。
「私たちには残った時間が少ない」と息子の行く末に胸を痛める両親。
だが、破天荒でそれこそ悪魔的に見えた彼の若い頃の言動を押さえつけなかったら、このような病気も発症せず、でもダニエルもここまで唯一無二なのを作れなかっただろうし。(鬱屈のせいか子供のままで世界がとまってしまったことが、イノセンスを際立てる)
ちょっとこのへんは「ヴァージン・スーサイズ」思い出す。
なにが幸せな結末だったのかさっぱり分からない。
しかもこれは故人の話でもましてやフィクションでもなく、今もアメリカで彼らは生活し、教会やスーパーマーケットに連れてったり、バンドの人と練習とかしてるわけで。
その辺を思うとヘビーだった。
いまじゃ簡単に鬱だとか病んでるとか言うけど(とくに私だ!)簡単に言っちゃあいかんなぁ・・・とちょっとがんばろうという気になった。



でも映画の質感自体はポップで淡くて、ドキュメンタリー的な深刻さや妙に「事実です!」っていう重々しさがなく、すてきな編集だった。
もともとダニエルが記録魔でたくさん当時の肉声や映像が残っているんだけど(母親の小言の隠し撮りは確かにショックだろうが、NYの警察に連行されたときまで撮ってあるとは・・・!)、知人のインタビューでの再現フィルムの部分もあまり落差ない感じでスマートにつながっていた。「水をかいてね」って動きの時にそっと「ぴしゃん」って水音のSEが追加されてたり。そーゆーちょっとしたこと。
見せ方も。ハートのカセットテープとか、ラストのキャスパーダンスと語りかけとか(あれは誰の声?)
・歯医者の治療中にインタビューすんの反則
ブライアン・ウィルソンがでてくるくだりで山羊にえさをあげにいっていた。ラブリー。
 (あとここで初めて今頃コーネリアススターフルーツの写真の元ネタを知った。ピチカートの写真の元ネタを見つけるたびに宝探しの気分を味わうけど、渋谷系、ネタ多すぎ)
・マネージャークビのくだりでウディ・アレンなのも。いいな。
・このへんで現実の重さが、いい感じに見やすく、中和されてるような。まるでこれもダニエルの夢で(映画冒頭も鏡に向かって「ダニエルの亡霊」が自分撮りしつつ語るとこから始まる)、ラストはコミックのヒーローがダニエルをすくってくれる。やったー。ってかんじでもよかった。
でも現実はそんなことない。

マウンテンデューのうたはネットで感想見るとみんなうけてたみたいだけど、わたしはあの歌が一番恐かった。狂気をかんじた。一生あの缶ジュース見るたび思い出しちゃうんだろうな・・・。歌詞がすてきだったけど、この脳みそは覚えてない。破滅的炭酸??悪魔が来た。悪魔も飲むよ マウンテン・デュー
・この人はあまり天才とか才能とか、そーゆーのは私は感じなかった。もちろんたっぷり「(普通の)人とは違う」けど。ただ、起きた事件は奇跡的に神がかってる。MTV乱入とか、偶然カートコバーンがTシャツを愛用したとか。(曲を好きになって着てたのかと思ったけど、映画ではそーゆー感じじゃなかった)
なにより初恋の(そしてその後永遠の報われぬ愛の対象となった)女の子の結婚相手が葬儀屋だったこと
・いや、才能はあるんだろうけど・・・。うまくいえないや。天才とかかんたんな言葉で勝たせない感じ。この言葉を使うと「天才だから、しょうがないよ」ってかんたんに割り切れちゃうから。
・ローラを失ったことで永遠の歌の女神となった。報われぬラブソングを20年間、全て彼女のための歌を作り続けた。
友人いわく、彼女は「HAIKU」でいう5.7.5の17文字全て。

とちゅう・・

 

2006-04-14